米国の財・サービスの輸出入 国別ランキング 2016年

米商務省の公表資料から米国の財・サービスの輸出入のランキング(2016暦年)を作ってみた。

まずは、輸入額のランキング。

順位 国・地域  額(10億ドル)     専有率
1 中国 462.8 21.1%
2 メキシコ 294.2 13.4%
3 カナダ 278.1 12.7%
4 日本 132.2 6.0%
5 ドイツ 114.2 5.2%
6 韓国 69.9 3.2%
7 イギリス 54.3 2.5%
8 フランス 46.8 2.1%
9 インド 46.0 2.1%
10 アイルランド 45.5 2.1%
  全世界合計 2189.2 100.0%

 続いては輸出のランキング。

順位 国・地域 額(10億ドル) 専有率
1 カナダ 266.0 18.3%
2 メキシコ 231.0 15.9%
3 中国 115.8 8.0%
4 日本 63.3 4.4%
5 イギリス 55.4 3.8%
6 ドイツ 49.4 3.4%
7 韓国 42.3 2.9%
8 オランダ 40.4 2.8%
9 香港 34.9 2.4%
10 ベルギー 32.3 2.2%
  全世界合計 1453.7 100.0%

 

遺伝子の多様性と経済発展の関係("Out of Africa"仮説)

 Ashraf and Galor (2013)は、遺伝子の多様性と経済発展の関係について述べている。彼らの仮説は、経済発展に程よい遺伝子の多様性の水準があるというものだ。遺伝子の多様性がありすぎる場合、お互いにうまく意思疎通することや信頼することが難しくなり、その結果として経済発展の足を引っ張る可能性がある。一方、多様性は分業化を促進し生産性を高めるので、多様性が小さすぎることもまた経済発展にとってマイナスとなる。f:id:Edamame:20170113101851p:plain

上のグラフはAshraf and Galor (2013)から引用したものである。横軸が遺伝子の多様性で、数値が大きいほど多様性が小さい。縦軸が人口密度であり、経済発展の代理変数となっている。山形のグラフの頂点付近にいるのが、ヨーロッパやアジアの国々であり、これらの国々が発展した一つの要因を示している。なお、日本は中国とともにちょうど良いポジションにいることがわかる。

この論文は Scienceに取り上げられ注目されたが、一方で批判もある。人類学者からは、遺伝子データの理解や歴史統計に対する事実誤認などの点で批判を受けている(Guedes, Jade d’Alpoim, et al. 2013)。

Reference

Ashraf, Quamrul, and Oded Galor. "The “Out of Africa” hypothesis, human genetic diversity, and comparative economic development." The American Economic Review 103.1 (2013): 1-46.

Guedes, Jade d’Alpoim, et al. "Is poverty in our genes?." Current Anthropology 54.1 (2013): 71-79.

中央銀行の用いるマクロモデルの非現実的なミクロ的基礎づけ

Voxに掲載されているMuellbauerのマクロモデル批判を読んだので、その批判のポイントをまとめてみる。ここで批判されているのは、いわゆるNew Keynesian DSGEモデルである。

Why central bank models failed and how to repair them | VOX, CEPR’s Policy Portal

  1. 標準的なDSGEモデルが想定する恒常所得仮説的な消費行動は、非現実的である。現実には、個々の消費者はその固有のリスクに直面しており、そのリスクは保険で完全にカバーできないものである。
  2. こうした個々の消費者の行動のマクロ的な結果は、代表的個人モデルが導き出すものとは異なっている。
  3. 金融構造の変化が捉えられていない。
  4. 家計のバランスシートが無視されている。

Muellbauerは、国や地域により金融の構造、家計のバランスシートの構成は異なっており、これにより金融政策の効果も異なると論じている。

米国で検討されている国境税調整(Border Adjustment Tax)とはなにか

米下院共和党が国境税調整の導入を目指している。この国境税調整とはどのような仕組みなのだろうか。

まず、NY TImesの記事より抜粋。

GOP: Cut Taxes, Change Brackets; But What About Deficits

Under the system, American companies that produce and sell their products in the U.S. would pay the new 20 percent corporate tax rate on profits from these sales. However, if a company exports a product abroad, the profits from that sale would not be taxed by the U.S.

(拙訳)(提案されている)国境税調整の下では、アメリカ国内で生産し販売して得た利益に対して20%の税がかかる。一方で、企業が輸出をした場合、それに伴う利益はアメリカ国内では課税されない。

There's more: Foreign companies that import goods to the U.S. would have to pay the tax, increasing the cost of imports.

(拙訳)さらに、米国に財を輸入する外国企業は税を払わなければならない。これは輸入コストを増加させる。

Exporters love the idea. But importers, including big retailers and consumer electronics firms, say it could lead to steep price increases on consumer goods.

(拙訳)輸出業者はこのアイデアを歓迎している。しかし、大規模小売店や家電メーカーを含む輸入業者はこの税制が物価の急激な上昇を招くとしている。

以上のように、言ってみれば法人税を製品が国内で消費されたベースでとるという考え方である。おそらくは中国で作って米国で製品を売り利益をあげているが、利益を米国に戻さず海外子会社に滞留させているような主体から税金を徴収したいということなのだと思う。

ちなみにHavard大教授のMartin Feldsteinがこの税制について論考をWSJに書いている。この論考のポイントは、輸入コストが上昇して消費者が不利益を被るという主張は為替の影響を考慮していないというものだ。米国の貿易収支が一定であるためには為替がドル高方向に動くと論じている。そのため消費者の支払うコストは結局変わらない。そして貿易収支は不変であるが、米国は貿易赤字であるため、輸入側からの税収が輸出側の税免除をしのぐため、全体で見て税収は増える。

The House GOP’s Good Tax Trade-Off - WSJ

個人的にはドル高がそう教科書通りに起こるのかどうかは疑わしいと思うが、税収が増えるというのは直感的に正しいのではないかと思う。

米国の大学授業料

ニューヨーク州が州立大学の授業料を無償化したことが話題になっている。

NY州、公立大の授業料無料に 全米初 :日本経済新聞

 

実際にニューヨークの州立大学の授業料はいくらなのだろうか。

SUNY (State University of New York)のHPを見てみると、NY州在住者で年間$6,470、州外の学生では$16,320となっている(2016-2017、学部生)。1$=120円で計算すると、それぞれ約78万円、約196万円だ。

私立のHarvard($43,280≈520万円)と比べると大分安いが、それでも日本人の感覚からすれば驚くほど高い。

 

さらに驚くのは、大学授業料の上昇のスピードだ。

College tuition and fees increase 63 percent since January 2006 : The Economics Daily: U.S. Bureau of Labor Statistics

上記リンクの記事によれば、2006年1月から2016年7月の間に、大学授業料及び関連費用は63%も上昇している(物価全体は21%の上昇)。

この背景として、wikipediaでは、公的補助の削減や、大学教育の価値の高まり、学生向けローンの利便性の向上などが挙げられている。

College tuition in the United States - Wikipedia

 

学生ローンの残高が急増していることは米国で関心の高い問題となっており、授業料高騰の問題と合わせて、今後とも注目していきたい。