米国で検討されている国境税調整(Border Adjustment Tax)とはなにか

米下院共和党が国境税調整の導入を目指している。この国境税調整とはどのような仕組みなのだろうか。

まず、NY TImesの記事より抜粋。

GOP: Cut Taxes, Change Brackets; But What About Deficits

Under the system, American companies that produce and sell their products in the U.S. would pay the new 20 percent corporate tax rate on profits from these sales. However, if a company exports a product abroad, the profits from that sale would not be taxed by the U.S.

(拙訳)(提案されている)国境税調整の下では、アメリカ国内で生産し販売して得た利益に対して20%の税がかかる。一方で、企業が輸出をした場合、それに伴う利益はアメリカ国内では課税されない。

There's more: Foreign companies that import goods to the U.S. would have to pay the tax, increasing the cost of imports.

(拙訳)さらに、米国に財を輸入する外国企業は税を払わなければならない。これは輸入コストを増加させる。

Exporters love the idea. But importers, including big retailers and consumer electronics firms, say it could lead to steep price increases on consumer goods.

(拙訳)輸出業者はこのアイデアを歓迎している。しかし、大規模小売店や家電メーカーを含む輸入業者はこの税制が物価の急激な上昇を招くとしている。

以上のように、言ってみれば法人税を製品が国内で消費されたベースでとるという考え方である。おそらくは中国で作って米国で製品を売り利益をあげているが、利益を米国に戻さず海外子会社に滞留させているような主体から税金を徴収したいということなのだと思う。

ちなみにHavard大教授のMartin Feldsteinがこの税制について論考をWSJに書いている。この論考のポイントは、輸入コストが上昇して消費者が不利益を被るという主張は為替の影響を考慮していないというものだ。米国の貿易収支が一定であるためには為替がドル高方向に動くと論じている。そのため消費者の支払うコストは結局変わらない。そして貿易収支は不変であるが、米国は貿易赤字であるため、輸入側からの税収が輸出側の税免除をしのぐため、全体で見て税収は増える。

The House GOP’s Good Tax Trade-Off - WSJ

個人的にはドル高がそう教科書通りに起こるのかどうかは疑わしいと思うが、税収が増えるというのは直感的に正しいのではないかと思う。