遺伝子の多様性と経済発展の関係("Out of Africa"仮説)

 Ashraf and Galor (2013)は、遺伝子の多様性と経済発展の関係について述べている。彼らの仮説は、経済発展に程よい遺伝子の多様性の水準があるというものだ。遺伝子の多様性がありすぎる場合、お互いにうまく意思疎通することや信頼することが難しくなり、その結果として経済発展の足を引っ張る可能性がある。一方、多様性は分業化を促進し生産性を高めるので、多様性が小さすぎることもまた経済発展にとってマイナスとなる。f:id:Edamame:20170113101851p:plain

上のグラフはAshraf and Galor (2013)から引用したものである。横軸が遺伝子の多様性で、数値が大きいほど多様性が小さい。縦軸が人口密度であり、経済発展の代理変数となっている。山形のグラフの頂点付近にいるのが、ヨーロッパやアジアの国々であり、これらの国々が発展した一つの要因を示している。なお、日本は中国とともにちょうど良いポジションにいることがわかる。

この論文は Scienceに取り上げられ注目されたが、一方で批判もある。人類学者からは、遺伝子データの理解や歴史統計に対する事実誤認などの点で批判を受けている(Guedes, Jade d’Alpoim, et al. 2013)。

Reference

Ashraf, Quamrul, and Oded Galor. "The “Out of Africa” hypothesis, human genetic diversity, and comparative economic development." The American Economic Review 103.1 (2013): 1-46.

Guedes, Jade d’Alpoim, et al. "Is poverty in our genes?." Current Anthropology 54.1 (2013): 71-79.